教養としての数学

数学は役に立つのか

日常生活で使うか使わないと問われれば,2次方程式を解く場面すらほとんどありません.私の父は精密機械工学を専攻し,大手電機メーカーに30年間勤めましたが,微積分を使ったことは1回もありません.せいぜい,シグマを1回使ったか使わないかぐらいのレベルです.

日常生活で本当に使わないのであれば,義務教育で数学を必修科目にする必要はありません.理科の実験は目に見えますし,情報機器の実習ならすぐに役立つかもしれませんが,数学に「実験」や「実習」はありません.

宇宙飛行士を乗せたスペースシャトルが打ち上げられる時はニュースになりますが,数学が嫌いでも,それなりに興味をもつ人もいらっしゃるでしょう.スペースシャトルの打ち上げには,相当の時間とお金を必要とします.無事に帰還するために必要最低限なお金を削ってはいけませんが,「必要最低限」とはどのぐらいのことを指すのでしょうか.

地上でボールを思いっきり投げ上げても,重力のせいで地面に落ちてしまいます.同じように,スペースシャトルが打ち上げられても,ある程度の速さがないと,地球の軌道から抜け出せません.その最低限の速さはどのぐらいでしょうか.

それは物理の話だろうと言われれば,間違いではありません.ただし,物理と数学は切っても切り離せない関係にあります.色々な大学のウェブサイトを見ると,「物理数学」とか「電気数学」という科目が見つかると思います.

必要なのものは「考える力」

誰もが日常生活や職場で2次方程式を解いたり,微分・積分をする必要はありません.計算だけなら,小学校の算数で十分です.数学で最も身近なものは「確率と統計」だと思います.例えば,くじ引きで「残り物には福がある」のは本当でしょうか.当たりが出尽くしてしまったら残りは外れしかありません.ところが,最初にくじを引く時には,当たりだけでなく,外れも全部残っています.間をとって,真ん中ぐらいで引く人もいるかもしれません.経験談や感覚で物事を言うのは簡単ですが,客観的に正しいかどうか(信じてくれるかどうか)は他の人によってしまいます.

数学を履修する最大の目的は,何かの素材に対して,どうすれば問題が解決できるかを道筋を立てて(論理的に)考えて書きだすことです.さらに,その結果を疑問に思った他の人が,書かれたものをみて追試できるよう,理由(根拠)をしっかり書くことです.

なお,追試とは「テストの点数が悪かった人がもう1度受けるテスト」というように思いがちですが,ある人が実験で出した結果を他の人が同じ条件の下で試すことが「追試」です.テストのことは「再試験」と言った方が良いかもしれません.

私の経験談

現役高校生では数学が得意科目であり,好きでした.高校2年生に志望校別のクラス分けがあり,国立大学の理系クラスに所属していました.その私も,中学受験の時は文系科目が得点源でした.算数もそれなりに得点はできますが,図形の問題が苦手で,中学数学でもそのままでした.

劇的な変化が起きたのは中学3年生の時です.私立の中高一貫校なので,この学年から学習内容は高校のものになります.具体的には「数学I・A」を学習します.最初の授業で,教科傍用問題集が配られ,先生が「だまされたと思ってやってごらん」と仰いました.そこで,不謹慎ながら「だまされてみるのも面白いか」と思い,問題を全て解きました.

その先生は授業で説明をする前に予習用のプリントを配ります.授業中はプリントの解答・解説を講義します(教科書は使いません).この場合,単に黒板の解答・解説を丸写しするだけでは,ほとんど力はつきません.私の場合,教科書を読んで予習し,間違っていても自分なりの答えをだしました.分からないところは先生に質問しました.

それでも,始めは手も足もでない問題が多かったです.しかし,積み重ねていく内に,だんだん正解できるようになりました.そこで,授業中は明らかに間違っていると思われる問題だけ,先生の解答・解説に耳を傾けました.自信のある問題の解答・解説時には,授業中なのに予習を進めています(同じ科目の勉強ですから怒られることはありませんでした).

すると,自宅での予習量がだんだん減っていきます.その分,他の苦手科目をつぶせますし,授業の時にも余裕がでてきました.結果的には「継続は力なり」を実践しただけで,初めから数学がずば抜けてできたわけではありません.

受験数学は数学の力になるか

私の場合,結論は「半分は(半分しか)ならない」です.個人的な持論ですが,本来の「考える力」をつけるならば,ある程度,公式(定理)を見ても関数電卓を使っても構わないと思います.むしろ,分からなくなった時でもそれを解決する方法は分かっていることが大切です.

例えば,いくら英単語を覚えても,英字新聞を隅から隅まで辞書なしで和訳するのは非常に難しいです.しかし,電子辞書もあれば,翻訳サイトもあります.ところが,翻訳サイトも完全ではありませんし,分からない単語が多すぎると,辞書をひく時間だけ増えてしまいます.

受験数学(難問)

全員がすらすら解けるような問題は難問ではありません(笑).意気込みすぎて,いきなり難問ばかり解くと逆効果です.手がつかないばかりでは誰だって嫌になります.まずは,簡単な問題で数をこなします.難しい理論を言えばキリがないので,形から入ります.それで解けるようになったら,なぜこの解き方でできたのか,手がかりが得られるかもしれません.

入学試験の問題では「どの項目から出題されたか」は書かれていません.たいていは2つ以上の内容を絡めたものがでてきます.逆に言えば,どの項目とどの項目が絡んでいるのかさえ分かれば,見かけは嫌でも,あっさり解けることがあります.