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始めに

このたび,私は大学に入学を認められ,これから4年間,ITを中心とした工学について学ぶ機会が与えられた.しかし,これは学ぶための「環境」が与えられたに過ぎず,これをどう活用するかは私自身の問題である.また,大学という「環境」に一日も早く適応し,それを最大限に活用するために,ある程度の準備をしておく必要がある.

さらに,ITエンジニアは,常に向学心を強く持ち続けなければならない.もちろん,学問自身に強い興味をもつことが挙げられるが,それだけでは,将来的に不足である.自身のモチベーションを上げるためには,ITのみでなく,さまざまな分野に対して強い関心をもち,ときには自身をリフレッシュさせる必要がある.

前者については,専門科目だけではなく,世の中の事象を的確にとらえるために,幅広い見識をもち,教養を高めることである.後者については,適度な休息をとることだが,一人だけでリフレッシュをするのは困難だ.多くの休息は,複数人で雑談をする等して時間を過ごすものであり,そのためには気の置ける人――友人であったり学友であったり,または先生方であったり――をもつことが重要である.自分からすすんでコミュニケーションをとれるようになるのが理想だ.

以上のことをふまえて,大学入学までの目標,大学卒業までの目標,卒業後の人生設計についてまとめることとした.

大学入学までの目標

私はAO入試という形態で大学に合格した.このタイプの試験を受けた理由は,大きく分けて2つある.1つは,資格試験の結果や学校での課外活動が考慮される等,学力に限らない審査方法であったからだ.そして,率直なものとしてもう1つは,一般入試やセンター試験利用型に対して,学力が十分ではないと考えた.もちろん,客観的に見ても現役のときであればこの問題はなかったであろう.

しかし,大学入学が決まったことで,工学の基礎となる数学や物理,英語(外国語)の学習が必須になった.大学入試の問題を解くことと,工学の基礎として学問を学ぶには,違う点もいくつかあると思うが,いずれにしろ基礎事項の徹底は不可欠である.そこで,特に英語・数学・物理について,高校の範囲を一通り復習して,大学に入学後,つまずくことのないようにしたい.幸い,自宅には高校のときに学校から配布された問題集があり,基礎事項の確認はできると思う.

ただ,工学としての基礎を身につける学問をしたいので,あまり高校範囲内のことにこだわろうとは思わない.例えば,両親や母校の先生に聞くと,大学の物理は微分積分を用いて事象を解析することが当然とのことだ.一方,私の所持している物理の問題集は高校物理のものであるため,微分積分を使った学習方法については書いていない.

そこで,できれば物理の先生と電子メール等で連絡し,来年度の大学の教科書が決まっているのならば,先に買ってある程度予習をしたい.

なお,数学については,個人的な趣味ということもあるが,実用数学技能検定の1級(大学入学初年度程度の難易度とされる)を取得したいと思う(現在は2級取得).数学検定の問題は入試とは違い,本質的な数学への理解が試されると思う.また,英語については,当面はTOEICを目標として学習したい.初めて受けたとき(高校を中退して約2年後),365点という恥ずかしい成績を修めてしまったため,基本的事項から復習を始めたいと思う.やはり,使える英語を学びたいので,教科書の枠にとらわれない学習をしたい.

以上のことで,入学までの期間は過ぎると思うが,もし余力があれば,大学で学ぶ専門科目について,復習を兼ねて学習したい.これについては,次項で詳述する.

大学卒業までの目標

AO入試において論文の中でも書いたことだが,現段階の私はITについて,ソフトウェア開発技術者合格程度の知識はあると判断される.しかし,あくまで断片的な知識の集合でしかなく,体系的な学習はほとんどなされていない.また,それらを実践する機会があまりなかった.

ただ,断片的な知識の集合でありながら,ITの最も基礎的な事項については理解していると思われる.例えば,今まで全くITを学習していなかった学生も入学してくると思うが,その人達に比べれば,ある程度アドバンテージはある.ただし,それにうぬぼれていてはITの理解についても一気に追いつかれるのは必至だ.

私は高校でもどん欲な学習を心がけてきた.学習に限らないものだが,一定のレベルに達して満足したままになってしまうと,それ以上の成長はないものだと言える.特にITについては日進月歩の世界であるため,ますますそのような自己満足はナンセンスと言えるだろう.

おそらく,入学初年度は講義を漫然と聞き流すだけでは退屈になってしまうだろうし,それ以前に,学ぶ者がそのような態度をとってはならない.また,完全な復習だと思っても,いざふたを空けると,意外と別方面の部分から理解の補強になったりすることが経験により分かっている.

そこで,講義を聴くことはもとより,先生方の都合が良い時間に,質疑応答や,自学のための助言をお借りする等して,早い段階で学習を進めていきたい.もちろん,論文にも書いた通り,過去に早いペースで行き過ぎて倒れてしまったことがあるので,その辺りはきちんとコントロールしていきたい.

以上のことは,先生方と私個人の力である程度できることだが,それだけでは不足である.私は学習以外にも,課外活動や研究会等で色々な人と出会い,自分の視野を広げていきたいと思う.独学で今までやってきたため,率直なところ,私のコミュニケーション能力には難がある.大学は学習の環境がそろっていることはもちろんであるが,色々な人と知り合い,話し合うことで社会的な勉強もできるところだと思っているし,そのため,私は大学入学を決意した部分もある.

最終的には卒業論文,そして,大学院でも論文を書くことになると思うが,論文は自分の成果を明確に示すだけでなく,相手が読んで理解できるものでなければならない.常に客観的な態度を忘れず,思いやりのある文章にまとめる必要がある.もちろん,技巧的な部分もあるが,生身の人間に触れることが,この手の学習では最も効果的だと思う.

最も重要なのは,大学の4年間は「自分で学習する」という態度と方法を身につけることだと思う.課題図書『エンジニアのための開発生活ガイド』を読み,エンジニアにはさまざまなスキルが求められることが分かった.もちろん,知識を深めることも大事ではあるが,単に文献をあさっているだけでは意味がないし,効率も非常に悪いだろう.

「自分で学習する」ということは独学をするという意味ではなく,どのようにして自分を磨いていくかを考えることだ.その中には,学友や先生方との会話も含まれる.自分を刺激し高めていくには,自分自身だけでなく,他の人と触れ合うことが効果的だ.将来,一人前のエンジニアとなり,「開発生活」を送る手がかりを,4年間で少しでも多くつかみとりたい.

卒業後の人生設計

私はITについて全体的に興味があるが,ピンポイントで特にこの領域,というものは決まっていない.しかし,将来的に作るエンジニア,研究員を目指したいならば,ある程度専門領域をもつことが必要だ.そのため,自分が特に興味をもてるものを幅広く学習したものの中から見つけ,選んだものを深く追究していきたい.もちろん,自分の専門領域以外の人とも話し合うことで,より見識が深まる.

一方,学習とは別の問題として家庭の事情がある.私は一人っ子であり,母親は既に他界した.また,父親は来年の初めに勤めている会社を退社し,セカンドキャリアを見つけることになっている.正式な休暇であるため,ある程度の収入は保証されるが,今まで,私はさんざん親に金銭的な面で負担をかけてしまい,申し訳なく思っている.

だからと言って,アルバイトをたくさんいれるという訳ではない.アルバイトは肉体的・精神的労働を求められる.当然,労働をすれば疲労もたまる.その疲労により学業に差し支えがでては本末転倒である.

この金銭と時間のバランスをコントロールできる力は,卒業後も多いに必要とされるスキルだ.まずは,その感覚を身につけたい.

さて,仕事をするにあたっては,やはり自分の興味がもてるもので行うのが理想的だと思う.もちろん,まだ私が知らない苦痛もあるが,苦痛がない仕事はないし,苦痛を伴うことでより人間は成長するものだ.

現在,社会的問題としてニートや引きこもり等,社会と接点を閉ざしてしまう若者が連日報道番組で取り上げられている.私個人としては,そのような人達について理解はある.と言うのは,私自身が高校中退後しばらくは強い抑うつ状態であり何もできず,家で毎日を過ごしていたからだ.社会側の問題というのも大いにあるだろう.

しかし,もちろん若者の態度自身にも問題があると思うし,社会と接点をもとうとしない限り,誰も何も治療のしようがない.私は決して高校中退後の4年間が無駄だとは思っていないし,むしろ今まで勉強一辺倒だった私が色々な世界を見ることで視野が少し広がった気がする.また,その中で伴った苦痛は,私は一生忘れない.

私が教授や講師といった職業に就くかは不透明である.しかし,教職にしろそうでないにしろ,年長者は若者に対して生きる指針を示さなければならない.往々にしてよくこの間のやりとりが摩擦となる.もちろん,若者自身が改めるべきところはあるが,それ以上に,年長者は自分が軽く思われる雰囲気ではいけないと思う.

私の周囲の知り合いでも,何かしら社会生活にうまくいかない人がいて,お互いによく雑談や相談をする.完全に順風満帆な人はいないが,今までの22年間で多かれ少なかれ,順調な度合いに差がついたと思う.もちろん,今まで平均的にうまくいった人は,うまくいかない人の心理が分からないとは言えない.しかし,私はそれを経験したため,より,そのような人達を理解できる.

逆境に立たされたとき,一番の薬になるのは激励である.しかし,単に「頑張れ」と言うだけでは何の解決にもならない.自分ではねのけて,成果をだして,「こんな私でもできた」と示すことが最も勇気を与えるものだ.

全ての人に受け入れられるとは思わないが,エンジニアとしてはもちろん,人間として目標とされるような人物を目指したい.それが,社会の諸問題の解決に役立てば嬉しいし,自分から社会に貢献できる人になるべきだ.今,私はそのスタートラインにようやく立った.エンジニアだけでなく,人として深みのある人間を,学問の修得や他人とのコミュニケーションを通して目指したい.